おかの ひとたちが、
しぃちゃんの おみせで
おちゃを のんでいました。
しぃちゃんは
きょうも まどぎわの いすで、
ぐうぐう ねています。
だれかが
おちゃを すすって、
ぽつりと いいました。
「モカさんも
かわったねえ」
べつの ひとが
うなずきました。
「ほんとだねえ」
「むかしは
あんなに
ひとぎらいだったのにねえ」
「いまじゃ
いつも にこにこして、
ちいさいのを せおってるよ」
みんな
くすっと わらいました。
その ちいさいのは、
くびに あかい
ミニハーモニカを
ぶらさげています。
ぷう。
ちいさな おとがして、
みんなは また
わらいました。
でも――
モカさんが
まだ こんなふうに
わらうまえの ことです。
ある よる。
モカさんの いえの したで、
ちいさな なきごえが
きこえました。
ふええ。
ふええ。
「……ん?」
しゅうりの とちゅうで
いねむりを していた
モカさんは
めを さましました。
もういちど、
なきごえが しました。
ふええ。
ふええ。
モカさんは
むくりと たちあがって、
みみを すませました。
「かあさん……?」
でも、
いっかいの しぃちゃんは
ぐうぐう ねています。
「かあさんってば」
しーん。
ふええ。
ふええ。
モカさんは
しかたなく
かいだんを おりました。
きしきし。
きしきし。
げんかんを あけると、
そこに
ちいさな あかんぼうが
いました。
ちいさな てには、
まっかな ハーモニカを
ぎゅっと にぎっています。
さっきまで
ないていたのでしょう。
ほっぺには、
なみだの あとが
すこしだけ
のこっていました。
モカさんは
ランタンを そっと ちかづけて、
しばらく
ぼうっと みていました。
「……なんだい、これは」
そっと
ハーモニカを みると、
そこには
Diminish
と かいてありました。
モカさんは
ちいさく つぶやきました。
「お?
ディミニッシュだ。
めずらしいな」
でも、
いまは それどころでは
ありません。
モカさんは
いっかいの ほうをみて、
ためいきを つきました。
「かあさん……
たのむから
おきてくれよ」
でも しぃちゃんは
きもちよさそうに
ねています。
モカさんは
しかたなく
あかんぼうを
そっと だきあげました。
あかんぼうは、
ハーモニカだけは
ぜったいに
はなしません。
「それ、
そんなに だいじかい」
モカさんが
ちょっと さわると、
あかんぼうは
また ふええっと
なきました。
「わかったよ、
わかったよ」
モカさんは
あかんぼうを だいて、
ハーモニカも もたせたまま、
にかいへ つれていきました。
きしきし。
きしきし。
こうぼうの すみに
ふとんを しいて、
その となりに
あかんぼうを ねかせます。
あかんぼうは
それでも まだ、
まっかな ハーモニカを
ぎゅっと もっています。
モカさんは
その ちいさな てをみて、
ちょっとだけ
わらいました。
「へんな やつだなあ」
やがて
あかんぼうは
すうすう
ねいきを たてはじめました。
モカさんも
その よこに
ごろんと なりました。
てんじょうを みながら、
ぽつりと いいます。
「……あした、
どうしたもんかな」
でも、
その こたえは
まだ ありません。
こうして
ダンマリヶ丘の よるに、
ちいさな あかんぼうが
ひとり、
やってきたのでした。

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