ブルースハーモニカ

変わった配列だけど、可能性大⁉︎ブルースハーモニカのディミニッシュチューニングについて。

(※この記事は、10年以上前の、大昔の記事から転載しています)

ディミニッシュチューニングって!?

ディミニッシュチューニングとは、10ホールズをディミニッシュスケールにチューニングして、無い音をベンドの音で補完することによって全ての音を出せるようにしたチューニングです。なので一応、クロマチックスケールが吹けます。

はっきり言って吹くのがとても難しいハーモニカですが、うまく使えばかなり面白いと思いますので、紹介したいと思います。

配列はこんな感じ。

穴番号12345678910
吹く音ミ♭ソ♭ミ♭ソ♭ミ♭
吸う音ファラ♭ファラ♭ファ

1音、半音、1音、半音~と、全て同じ感覚を空けて並べられた、ディミニッシュスケールと言われる音階で、配列されています。ドレミファソラシドも揃ってないし、これでどうやって吹くの?って思われるかもしれません。

実はこの配列、ベンドの音も入れてはじめて成立するのです。配列表にベンドで出せる音を加えると、こうなります。

穴番号12345678910
吹く音ミ♭ソ♭ミ♭ソ♭ミ♭
ベンドレ♭シ♭レ♭シ♭レ♭
吸う音ファラ♭ファラ♭ファ

ベンドの音を加えることによって、クロマチックのスケールが吹けます!

ディミニッシュチューニングの長所と短所

ディミニッシュチューニングの長所は、当然、10ホールズでクロマチックスケールが吹けるって事です。でも、もっといいことは、全ての穴が同じ音程差で並んでいるという事です。

何が良いかというと、1番穴からドレミファソラシドのスケールを覚えたとしますよね。
そしたら、2番穴から同じ吹き方で吹けば、Ebのスケールが吹けるのです。
さらに、3番から始めればG♭、4番から始めればAのキーでも吹けます。

つまり、ひとつのキーで曲、フレーズなどを覚えたら、穴をずらすだけで4つのキーで演奏出来るようになるのです。
ギターみたいですね。・・・という事は!

「吹く音から」、「ベンドの音から」、「吸う音から」の3タイプの吹き方を覚えれば、1本のディミニッシュで、全キーを演奏できると言う事です。

それすらもメンドくさいと思う人は、半音ずつキーの違う3本のディミニッシュをそろえれば、全キーで演奏できます。

と、ここまで書くとなんだか魔法の配列のように思えますが、結構ヘビーな短所がいくつかあります。

・ベンドが出来ないと「かえるの歌」も「チューリップ」も吹けない。
 普通の配列だったらとっても易しい曲も、激むずかしくなる可能性があります。
 スケールを駆け上がるような、早いフレーズも、ちょっと苦手です。


・ベンドの不安定な音が許せない人には無理。
 全てを正確なピッチで演奏するのは至難の技だと思います。
 子供のときからやってたらひょっとしたらいけるのかな・・。


・スタンダード配列のような和音は使えない。(でもこの配列なりの”何か”があるかも!?)


・音域が少しせまい。(でも2オクターブ半あります。)


・こんな配列、通常の製品ではもちろん無いので、特注を頼むしかありません。

と、この辺が気になる所ですが、ベンドのピッチの問題は普通の10ホールズでもありますし、あの不安定な所、私は、曲によって逆に魅力になると思っています。

ディミニッシュチューニングを作るには

特殊配列については、鈴木楽器のホームページから、オーダーメイド配列の特注品を注文できます。
鈴木楽器のオーダーメイドハーモニカのページ
(商品代金と別に、特注料金と送料がかかります。)

下の表は、Dのディミニッシュチューニングの配列表です。参考にしてください。
(C以下のディミニッシュについては、オーダーメイドで対応していないリードが何箇所か必要になってきますので、一番近い音のリードをつけてもらって、自分で調律する必要があります。)

※追記(2023年1月)
 この記事を書いた時は、Lowキーのハーモニカがなかったので、低音側のリードの選択肢が狭かったのですが、今は、ひょっとしたら、低いキーも受けてくれる可能性がありますので、興味がある方は鈴木楽器に問い合わせてみてください。

・Dのディミニッシュチューニング

穴番号12345678910
吹く音d1f1g#1b1d2f2g#2b2d3f3
吸う音e1g1a#1c#2e2g2a#2c#3e3g3

おまけ ~ ディミニッシュチューニングを知った経緯

2004年(だったと思います。)、当時、鈴木楽器製作所の社員だった僕は、香港のハーモニカアジア大会に行かせてもらえました。
鈴木楽器製作所が、会場の一画に無料ハーモニカ修理コーナーを作り、僕はそこで、修理を担当していました。

その様子を見にきていたハーモニカプレイヤーのブレンダンパワーさんが、これを吹いてみろと、ハーモニカを差し出してきました。少し吹かせてもらうと、配列がなんだか良く分かりません。しかも、和音で吹くとディミニッシュの和音になるのです。

その時は配列の意味が良く分からなくて、愛想笑いでその場を凌いだのですが、帰国後、ちょっと気になったのでパワーさんのカスタムハーモニカのページを見てみました。(パワーさんはカスタムハーモニカの販売もしています。)

すると、色々なチューニングの中に、「ディミニッシュ」というのがあったのです。
最初は意味が分からなかったのですが、良く考えたら半音階が吹ける事に気付いて、自分でも作ってみたという訳です。

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