モカさんと クロンは、
しばらく ならんで
おかの みちを
あるいていました。
さっき こうぼうで した はなしが、
まだ ふたりの むねの なかに
のこっています。
ちゃばたけの あいだを、
やわらかい かぜが
さらさらと
ぬけていきます。
クロンが
ぽつりと いいました。
「なんだか、
へんな きぶんです」
モカさんは
すこし わらって、
「そうかい」
と いいました。
「ええ。
じぶんだけだと
おもっていたので」
モカさんは
すこし だまって、
ただ
「うん」
と だけ いいました。
そのときです。
みちの さきの くさむらで、
なにかが
ぴょこん
と はねました。
つづいて
また ひとつ。
また ひとつ。
「あ……」
クロンが
たちどまりました。
モカさんも
あしを とめました。
くさの あいだから、
ちいさな まるっこい ものたちが、
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
と とびだしてきたのです。
ちいさな ブルースの おまめさん。
ふたつ ならんだ おとみたいな
トレモロの おまめさん。
つるりと ひかる
クロマチックの おまめさん。
それだけでは ありません。
なんだか
ハーモニカの おと そのものが
ちいさく なって
はねているみたいに、
いろんな おまめさんが
いっせいに
ぴょこぴょこ
あらわれました。
モカさんは
めを まるくして、
おもわず こえを だしました。
「お、おい……!
クロン……!
みえてるか?」
クロンも
めを みひらいたまま、
ちいさく
うなずきました。
「みえて います……!」
その とたん、
ひとつだけ、
つるっとした ちいさな
クロマチックの おまめさんが
ほかの こたちよりも
たかく、
ぴょーん
と はねました。
そして――
ぽん。
クロンの あたまの うえに、
ちょこんと
のったのです。
クロンは
ぴたりと
うごきを とめました。
「……え」
モカさんが
ゆびを さして
さけびました。
「のった!
いま のったぞ!」
クロンは
めだけを うごかして、
うえを みようとしました。
「い、いま
わたしの あたまに
なにか いましたか?」
「いたいた!
いたよ!
クロマチックのやつ!」
クロンが
まだ ぽかんとしていると、
その おまめさんは
また ぴょんと はねて、
こんどは
かぜの なかへ
すうっと
きえていきました。
まわりの おまめさんたちも、
くるくる、
ぴょこぴょこ、
たのしそうに はねたあと、
ちゃばたけの みどりの なかへ
きえていきました。
あとには
かぜの おとだけが
のこりました。
ふたりは
しばらく
そのばに
たったままでした。
やがて モカさんが、
まだ しんじられないような かおで
クロンを みました。
「……おれたち」
クロンも
モカさんを みました。
「ええ」
モカさんは
だんだん かおが
くしゃっと なって、
「おじさんなのに、
みちゃったな」
と いいました。
クロンも、
いつもの すました かおが
くずれて、
なんとも へんな かおで
わらいました。
「おじさんなのに、
みちゃいましたね」
「みたな」
「みました」
「うん」
ふたりは、たしかめあうように
なんかいも うなずきました。
それから ふたりは、
なんだか おかしくなって、
かおを みあわせて
しばらく
こえを だして
わらっていました。
でも
わらいながら、
ふたりの めの おくは
すこしだけ
あつく なっていました。
ふたりにとって
わすれない よるが
しずかに ふけていきました。


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