あるひ、
モカさんの こうぼうに
ひとりの おきゃくさんが
やってきました。
りっぱな うわぎ。
ぴかぴかの くつ。
きちんとした かばん。
モカさんは
その かおを みて、
「あ」
と いいました。
まえに、
「この ハーモニカ、
ふりょうひんだろう」
と いって、
クロマチックハーモニカを
もってきた
おきゃくさんです。
おきゃくさんは、
こうぼうへ はいるなり
ふかく
あたまを さげました。
「そのせつは、
たいへん
しつれいしました」
モカさんは
くすっと わらいました。
「いやいや。
よく きたねえ」
おきゃくさんは
かばんから
めいしを とりだして、
りょうてで
モカさんに
さしだしました。
そこには――
カチ田 カチのすけ
と かいてあります。
カチ田さんは、
となりまちの がっこうで
こうちょうせんせいを
しているのでした。
「モカせんせい」
「せんせいは
やめてくれよ」
モカさんは
すぐに いいました。
「いえ」
カチ田せんせいは
いいました。
「あのひから、
とても よいおとが
でるように なってきました。
わたしに とっては、
モカせんせいです」
「……そうかい」
モカさんは
あきらめました。
そのとき、
つくえの したから
ちいさな かおが
のぞきました。
ヂムです。
カチ田せんせいは
うれしそうに
いいました。
「おお。
ぼうやも
おげんきそうで」
ヂムは
カチ田せんせいが
まえにきたときの ことを
おもいだして、
「ふわぁ」
と
あくびを しました。
そして、
くびからさげた
ミニハーモニカを ふきました。
ぷう。
「うむ、いいおとだね。」
カチ田せんせいが
えがおで いいました。
それから、
カチ田せんせいは
すこし せすじを のばして
いいました。
「じつは きょう、
モカせんせいに
ごそうだんが
ありまして」
「なんだい?」
「わたしの がっこうでも、
こどもたちに
ハーモニカを
やらせたいのです」
モカさんは
「へえ」
と いいました。
カチ田せんせいは
うれしそうに
つづけました。
「ハーモニカは
ちいさくて、
だれでも
おとを だすことが
できます」
「それに、
みんなで
おなじ がっきを
れんしゅうすれば、
きっと
きれいに
そろうでしょう」
「ですから――」
カチ田せんせいは
ぐっと
むねを はりました。
「ぜんいんに
ハーモニカを
やらせようと
おもっています」
モカさんは
すぐには
こたえませんでした。
つくえの したでは、
ヂムが
ねじの はいった はこを
ころころ。
ころころ。
ころがしています。
モカさんは
それを みてから、
カチ田せんせいに
いいました。
「じゃあ、
こんど
こどもたちを
つれて おいでよ」
「ここで
いろいろ
ためしてみたらいい」
カチ田せんせいの
かおが
ぱっと あかるくなりました。
「ありがとうございます!」
そして
すぐに いいました。
「では、
ぜんいんに
おなじ ハーモニカを
よういして――」
モカさんは
ちいさく わらいました。
「まあまあ。
それは
きてから
きめよう」
カチ田せんせいは
「?」
という かおを
しました。
つくえの したでは、
ヂムが
ころがってきた ねじを
ひとつ ひろって、
じっと
ながめています。
そして、
なぜか
うれしそうに
また
ぷう。
と
ハーモニカを
ふきました。
カチ田せんせいは、
そんな ヂムを
ふしぎそうに
みていたのでした。
(つづく)

コメント