ダンマリヶ丘のハーモニカ吹きたち【第34話】えらべる おと

つぎの ひ。

カチ田せんせいが、

がっこうの
こどもたちを つれて、

ダンマリヶ丘へ
やってきました。

「モカせんせい。

きょうは
よろしく
おねがいします」

「はいはい。

だから
せんせいは
やめてくれよ」

モカさんは
はずかしそうに
わらいました。

こうぼうの
まんなかには、

おおきな つくえが
だしてあります。

その うえには――

ブルースハーモニカ。

トレモロハーモニカ。

クロマチックハーモニカ。

ちいさな
ミニハーモニカ。

そして、

すず。

タンバリン。

ちいさな たいこ。

いろんな ものが
ならんでいました。

カチ田せんせいは、

しばらく
つくえを みてから、

いいました。

「モカせんせい」

「うん?」

「きょうは、

みなで
おなじハーモニカを
たいけんするのでは
なかったでしょうか」

「そうだよ」

「しかし……」

カチ田せんせいは

すずと
たいこを
みました。

モカさんは
いいました。

「まあ、

まずは
すきなのを
えらんでみよう」

こどもたちは、

いっせいに
つくえの まわりへ
あつまりました。

ブルースハーモニカを
えらぶ こ。

トレモロを
えらぶ こ。

クロマチックの
ボタンを

かち。

かち。


おしている こ。

ミニハーモニカを
ふたつ もって、

どっちに しようか
まよっている こ。

そして――

「ぼく、
これ」

ちいさな おとこのこが
えらんだのは、

たいこでした。

カチ田せんせいが
いいました。

「きみ。

ハーモニカは
どうしたのかね」

おとこのこは
たいこを もったまま、

いいました。

「こっちが
いい」

「……そうかね」

カチ田せんせいは
すこし
こまった かおを
しました。

その となりでは、

なにも
えらばない こも
いました。

モカさんが
ききました。

「きみは
なにか やらないのかい?」

そのこは
ちいさく
くびを ふりました。

「きいてたい」

「そうかい」

モカさんは
それだけ いいました。

カチ田せんせいは、

また
すこし こまった かおを
しました。

やがて、

こどもたちは
それぞれの ものを
ならしはじめました。

ぷう。

ぴい。

ふわあ。

しゃん。

とん。

ぷぴー。

さいしょは、

ほんとうに
ばらばらでした。

カチ田せんせいは
だんだん
そわそわしてきました。

「モカせんせい。

そろそろ
おなじ きょくを――」

そのときです。

ミニハーモニカを
もった こが、

ぷう。

ぷう。

と、

おなじ おとを
ふきました。

すると、

たいこの こが、

とん。

とん。


こたえました。

トレモロの こが、

ふわあ。

と、
その うえに
おとを のせました。

すると、

さっき
なにも えらばなかった こが、

ちいさな こえで

らー。


うたいはじめました。

ぷう。

とん。

ふわあ。

らー。

だれが
はじめたのかも
わかりません。

でも、

いつのまにか、

ばらばらだった おとが
すこしずつ

ひとつに
なっていきました。

こどもたちは、

おたがいの かおを
みながら、

なんだか
うれしそうです。

カチ田せんせいは、

なにも いわずに
きいていました。

しばらくして、

おとが
しぜんに
おわりました。

しーん。

こどもたちは、

みんな
ちがう ものを
もったまま、

にこにこ
しています。

カチ田せんせいは
ゆっくり
いいました。

「……なるほど」

それから、

たいこを もった
おとこのこを
みました。

「きみは、

たいこが
すきなのかね」

「うん!」

「そうか」

つぎに、

なにも もたずに
うたっていた こを
みました。

「きみは、

きくのが
すきなのかね」

そのこは
うなずきました。

「うん。

みんなの おと、
おもしろかった」

カチ田せんせいは

しばらく
そのこを
みていました。

そして、

ゆっくり
うなずきました。

「それも、

りっぱな
さんかですね」

「わたしは また、

あたまが カチカチに
なっていたのかもしれません」

モカさんは
なにも いいませんでした。

ただ、

ちいさく
わらいました。

そのとき、

つくえの したから
ヂムが でてきました。

そして、

こどもたちの
まんなかに たって、

きりっ。

あかい
ミニハーモニカを
かまえました。

ぷう。

ぴょ。

ぷぴー。

こどもたちは
いっせいに
わらいました。

カチ田せんせいも、

とうとう
わらいました。

そのひ、

カチ田せんせいが
がっこうへ
もってかえったのは、

おなじ ハーモニカを
そろえるための
ちゅうもんしょでは
ありませんでした。

いろんな おとを
えらんだ

こどもたちの
たのしそうな かおでした。

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