ダンマリヶ丘のハーモニカ吹きたち 【第5話】フクさんの おと

ダンマリヶ丘のハーモニカ吹きたち

おかの うえで、
ヂムが ジュウスケと
あそんでいました。

ジュウスケは
ハーモニカを くるくる まわして、
ヂムを わらわせています。

ヂムも
きゃっきゃっと わらって、
くびの あかい ハーモニカを
ぶらぶら させています。

そのときです。

どこからか、
トレモロハーモニカの おとが
きこえてきました。

やさしくて、
すうっと のびて、
かぜの なかを
まっすぐに やってくる おとでした。

ジュウスケの てが
ぴたりと とまりました。

ヂムも
ふっと わらうのを やめて、
その おとの ほうを
みました。

おとの するほうへ いくと、
フクさんが
ひとりで ハーモニカを
ふいていました。

フクさんは、
レモの おじいちゃんです。

むかしながらの ふきかたで、
むかしの うたを
とても じょうずに ふきます。

レモは
その すぐ そばに すわって、
だまって きいていました。

ヂムも
ジュウスケの となりに ちょこんと すわって、
フクさんを みています。

フクさんの おとは、
やさしくて、
まっすぐで、
でも どこか
きびしい ところも ありました。

たのしかった ひのこと。
むかし いっしょに わらった
なかまのこと。

だいじな ひとを
おもった きもち。

かなしかったことも、
きっと あったのでしょう。

でも フクさんの おとは、
かなしいだけでは ありません。

あたたかくて、
なつかしくて、
きいていると
こころの おくが
しずかに ふるえるような おとでした。

そのうちに、
クロンも やってきました。

クロンは
レモの おとうさんです。

すこし はなれたところで
たちどまって、
フクさんの おとを
しずかに きいていました。

ジュウスケは
いつもなら
なにか ひとこと
いいそうなのに、
このときは
なにも いいませんでした。

ヂムも
めを まるくして、
じっと きいています。

レモは
まえから そこにいたみたいに、
しずかに フクさんの となりで
すわっていました。

ふきおわると、
しばらく
だれも なにも いいませんでした。

おかの かぜだけが、
そよそよと
ちゃばたけを ゆらしていました。

やがて ジュウスケが、
ちいさく いいました。

「……いい おとだなあ」

クロンも
しずかに うなずきました。

レモは
うれしそうに
フクさんを みあげました。

フクさんは
なにも いわずに、
すこしだけ わらいました。

ダンマリヶ丘の ひとたちは、
フクさんの おとを
たいせつに きいていました。

その おとの むこうにいる
フクさん そのひとのことも、
ちゃんと きいていたのです。

おかの かぜの なかに、
フクさんの ハーモニカが
ゆっくりと
ひびいていました。

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