ダンマリヶ丘のハーモニカ吹きたち【第43話】バロチとおとちず

あるひ、

しぃちゃんの おみせで、

ふたりの こどもが
おかしを たべながら
はなしを していました。

テーブルの うえには、
ハーモニカと
がくふが おいてあります。

「この がくふ、
リズムが よく
わからないんだ」

「ぼくも。
いつも みんなと
ずれちゃう」

ふたりは
がくふを みながら、

うーん。

と
かんがえています。

その すこし はなれた
せきでは、

フクさんが
おちゃを のみながら
ふたりの はなしを
きいていました。

そして、

ふと、

むかしの ことを
おもいだしました。

フクさんが
まだ ちいさかったころ。

きんじょに、
ちょっと かわった
おじさんが いました。

おじさんは
ハーモニカが だいすきで、

ときどき
おおきな かみを
かかえて

カタラズのきの
まえに
やってきました。

その かみには、

ハーモニカの
あなの ならびが
かいてありました。

「これは な、
おとちず っていうんだ」

おじさんは
そういって、

ながい ぼうを
とりだしました。

ぼうの さきには
おおきな
あかい やじるしが
ついています。

「さあ、
みんなで ふいてみよう!」

おじさんは
おとちずの うえで
やじるしを
うごかしました。

「ここ!」

「つぎは こっち!」

やじるしが
みぎへ
ひだりへ
うごきます。

こどもたちは
それを みながら
ハーモニカを
ふきました。

ぷう。

ぴい。

ぷうー。

「あっ!」

「ふけた!」

ふきたいおとの
ばしょが
はっきりわかるのです。

こどもたちは
おおよろこびです。

フクさんも
うれしくて
たまりません。

おじさんは
いつも
にこにこしていました。

あるひ、

おじさんが
フクさんに
いいました。

「フク、
じょうずに
なってきたな。

こんどは おまえが
やってみるか?」

「えっ、
ぼくが?」

おじさんは
あかい やじるしを
フクさんに
わたしました。

フクさんは
ちょっと
どきどきしながら、

やじるしを
うごかしました。

「ここ!」

「つぎは ここ!」

ともだちが
その とおりに
ハーモニカを
ふきます。

ぷう。

ぴい。

ぷうー。

「あっ!
できた!」

ともだちは
うれしそうに
わらいました。

フクさんも
おもわず
わらいました。

なんだか、

じぶんが
ふけたときとは
ちがう うれしさでした。

おじさんは
そんな ふたりを

にこにこしながら
みていました。

フクさんは、
そんなむかしのことを
おもいだして

ちいさく
わらいました。

「さて、
かえるか」

フクさんは
おちゃを のみおえると、
せきを たちました。

そして、

こどもたちの うしろを
とおりながら、

こっそり
がくふを
のぞきこみました。

それから、

なにも いわずに
おみせを
でていきました。

しぃちゃんは
そのあいだも、

ぐうぐう。

ねていました。

つぎのひ。

カタラズの きの したに、

また
あの ひとが
あらわれました。

じてんしゃには、
いつもの
ヘンテコな そうち。

バロチは
マントを ばさっと
ゆらして いいました。

「われこそは
かいけつバロチ!

リズムが にがてな
こども!

あつまれー!」

こどもたちは
ぞろぞろと
あつまってきました。

きのうの ふたりも
いちばん まえに
やってきました。

バロチは
むねを はって
いいました。

「おちゆく バーが
おととなる!

しろは ふくおと
あおは すう!

バロチの からくり
とくとみよ!」

バロチは
かたてで
ハンドルを にぎり、
まわしはじめました。

ぎこ。

ぎこ。

ぎこ。

すると、

そうちの なかから

しろい バーと
あおい バーが、

すうーっ。

すうーっ。

と
おりてきました。

そして、

ハーモニカの おとが
きこえてきました。

ぷうーーー。

ぷっ。

ぷっ、ぷっ。

……。

ぷうーーー。

「あれ?」

きのうの ふたりが
かおを みあわせました。

「これ、
いま れんしゅうしてる
きょくだ!」

バロチは
うん。
と うなずきました。

「さあ!

おちてくる バーに
あわせて
ふくのだ!」

こどもたちは
ハーモニカを
かまえました。

さいしょは
すこし
ばらばらでしたが、

なんどか
くりかえしているうちに、

だんだん
おとが
そろってきました。

「わあ!」

「ふけた!」

ふたりは
うれしそうに
かおを みあわせました。

バロチは
その ようすを
じっと みていました。

そして、

ふと、

おじさんの
あかい やじるしと、
ともだちの えがおを
おもいだしました。

バロチは、

マントの したで
ちょっとだけ
わらいました。

そして、

「うん」

と
うなずきました。

やがて、

「きょうは
ここまで!

さらにはげむのだぞ、
しょくん!」

そういうと、

バロチは
バーおちシートを
くるくると まきました。

そして、

おもたい そうちを
つんだ
じてんしゃに
またがると、

みぎへ
ふらり。

ひだりへ
ふらり。

ふらふらしながら
さかみちを
おりていきました。

こどもたちは
その うしろすがたを
みおくりました。

そして――

こんやも、

バロチは
こどもたちに あわせて、

あたらしい バーを
つくっているのかも
しれません。

チョキチョキ。

ペタペタ。

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