ダンマリヶ丘のハーモニカ吹きたち【第22話】おとうさんのハーモニカ

あるひ、
モカさんの こうぼうに
ひとりの おきゃくさんが
やってきました。

てには、
あおい ケース。

なかには
ふるい ハーモニカが
はいっていました。

カバーには
こまかい きずが
たくさん ついています。

モカさんは
それを うけとって、
そっと みました。

「おや。
ずいぶん ふいた ハーモニカだねえ」

おきゃくさんは
にこっと わらいました。

「でしょう。
よく おっことしたみたいで」

そういって、
くるんと うらを むけました。

「ほら、ここも。
へこんでるでしょう」

ほんとうに、
すこしだけ
へこんでいました。

モカさんは
ちいさく わらいました。

「でも、なおるよ」

おきゃくさんは
ほっとしたように
うなずきました。

「よかった。
ちちのなんです。
しゅうりに だすように
いわれてて」

モカさんは
「そうかい」
と いいました。

ヂムは
つくえの したから
じっと みています。

くびには
いつもの
あかい ミニハーモニカ。

モカさんは
ハーモニカを
そっと ぶんかいしました。

ちいさな ねじ。
うすい リード。
ながく つかわれた
きんぞくの におい。

それから、
ハーモニカを
ていねいに あらいました。

おきゃくさんは
その てつきを
たのしそうに
みていました。

「ちち、
ふくのは じょうずでしたけど、
ていれは ぜんぜんで」

「ふいたら ふきっぱなし。
しまったら しまいっぱなし」

モカさんは
くすっと わらいました。

「そういう ひと、
いるねえ」

「ええ。
でも いつも
たのしそうでした」

おきゃくさんも
わらいました。

こうぼうの なかには、
ことこと、
きゅっきゅっ、
ちいさな おとが
ひびきます。

ヂムも
きょうは めずらしく、
しずかに みていました。

やがて モカさんは
ハーモニカを
もとどおりに くみたてました。

そして、
くちもとへ そっと もっていって、
おとを たしかめました。

ぷう。
ぴい。
ぷう。
ぴい。

まっすぐで、
きれいな ドレミでした。

おきゃくさんは
その おとを きいて、
うれしそうに
めを ほそめました。

モカさんは
ハーモニカを
そっと さしだしました。

「はい。
もう だいじょうぶだよ」

それから、
もういちど
ハーモニカを みて、
ちいさく いいました。

「よく ひびく
いい ハーモニカだねえ」

おきゃくさんは
それを うけとって、
ての ひらの うえで
しばらく みていました。

それから、
ほんとうに なんでもないことみたいに、
あっさり いいました。

「なくなったんです。
せんげつ」

モカさんは
「え……あ、そうなんだね」
と いいました。

おきゃくさんは
でも、
ちっとも かなしい かおを
していませんでした。

なおった ハーモニカを
だいじそうに もって、
にこっと わらって
いいました。

「でも これで
ちちも また ふけます♪」

モカさんは
そのことばを きいて、
しばらく
その かおを みていました。

それから
ちいさく うなずきました。

「うん」

おきゃくさんは
ほんとうに うれしそうに
ハーモニカを もって
かえっていきました。

きしきし。
かいだんを おりて、
しぃちゃんの みせを ぬけて、
おかの みちへ
でていきます。

おきゃくさんを
みおくったあと、
ヂムが ちいさく
ミニハーモニカを かまえました。

ぷう。

やさしい おとが
またひとつ、
こうぼうに
ひびきました。

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